なぜロシア人はプーチンを支持するのか? 「地獄の90年代に戻りたくない」という国民共通の想い
歴史でひもとく国際情勢
■テロ勢力を掃討、さらにエネルギー価格高騰で好景気に
1999年、プーチンはテロ一掃を掲げ、ロシア軍をチェチェンに派遣します。第二次チェチェン紛争の始まりです。全土を掌握するため、ロシア軍は住民虐殺や村の破壊などを含む徹底的な「掃討作戦」を実施しました。
10年に及ぶ戦争で、チェチェンは完全にロシア軍の支配下に置かれました。徹底的な情報封鎖により、この戦争の犠牲者がどれくらいか、現在も分かっていません。一説によると20万人以上とも言われています。
テロリストの徹底的な取り締まりは、ロシア人に安心感をもたらしました。強いロシアが戻ってきた、と自信を回復させた国民も多かったことでしょう。
さらに、タイミング良く国際的な資源価格が高騰し、2000年代のロシアは好景気に沸きました。当時は欧米からの投資も盛んで、都市のインフラや行政サービスも改善していきます。普通のロシア人は「プーチンになってから急激に国がよくなった」という感覚を抱いたのです。
ところが、リーマンショックの影響を受け、国際的な石油価格は2008年7月を頂点に大暴落します。欧米や日本からの投資も潮が引くように去り、ロシア経済は低迷します。
■「90年代に戻りたくない」という不安から、プーチンを消極的に支持
景気が停滞する中でも、プーチンは国民から高い支持を受け続けています。その背景にあるのが、ソ連崩壊後の混乱した社会情勢の記憶です。「二度とあんなひどい社会になってほしくない」というのがロシア国民の共通した願いです。
とはいえ、プーチンが国民に「絶対的な支持」を得られているというわけではないと思われます。どちらかというと「消極的支持」。政治が不安定化し、外国に好きなようにやられる90年代のような地獄が訪れるのであれば、多少不満はあるけど、安定したプーチン政権のほうがまだマシ。大成功はしないけど大失敗もしない、「安定」をロシア人は望んでいるというわけです。
ウクライナ戦争によって仮にプーチンが失脚でもしてしまったら、確実にロシア政治は不安定化するし、欧米による政治的・経済的な干渉を受け、どんなひどい目に遭わされるか分からないという恐怖心。それがロシア人のプーチン支持の重要な要素になっているのではないかと、歴史から推察されます。

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